スギハラハウス

スギハラハウス再生|涙の完工

杉原さんと同郷の大野隊長

杉原さんと同郷の大野隊長

平和への祈りを込めた仕上げ塗装最終日

スギハラハウスの仕上げ塗装は、2日目を迎えました。

作業開始前に前日の仕上がりを確認すると、塗り継ぎによる目立ったむらもなく、外壁は美しく仕上がっていました。その状態を目にし、私たちはようやく少し安堵することができました。

2日目も、基本的な作業方法は前日と同じです。

職人たちは足場の上へ等間隔に並び、互いの進行速度を確認しながら、刷毛を縦横に動かしてシリカットペイントを塗り重ねていきます。

一度塗料が塗られたことで刷毛の滑りも良くなり、前日に経験した作業の感覚を全員が共有できていたため、施工速度は次第に上がっていきました。

当初は、限られた人数と時間の中で完成させることが困難とも思われた現場です。しかし、午後になると完工への見通しが立ち始め、張り詰めていた職人たちの表情にも、少しずつ柔らかさが戻ってきました。

この数日間、大野隊長をはじめとする職人たちは、どれほどの緊張と責任に耐えていたことでしょう。

杉原千畝氏がこの場所で下した決断に思いを寄せ、心の中で対話を重ねながら、一本一本の刷毛を動かしていたのではないでしょうか。

そのひと刷毛、ひと刷毛には、建物を美しく蘇らせるという職人としての責任とともに、差別のない世界と平和への祈りが込められていました。

そして、ついにすべての仕上げ塗装が完了しました。

作業を終え、足場から降りてくる大野隊長の頬を、涙が伝っていました。

限られた施工メンバーを選ばなければならなかった苦悩。文化遺産を必ず美しく仕上げなければならない責任。そして、日本から駆け付けた仲間全員の思いを背負い続けた緊張。

そのすべてから解き放たれた瞬間に流れた涙だったのだと思います。

私は、その姿を決して忘れることはありません。

杉原千畝氏がかつて使用していた執務室で、大野隊長を撮影した一枚の写真があります。

その写真を見るたびに、私には大野隊長が杉原氏の肩へそっと手を添えているように見えます。そして杉原氏もまた、「大野さん、ありがとう」と、静かに喜んでくださっているように感じられてなりません。

「深い川は静かに流れる」という言葉があります。

大野隊長は多くを語る人ではありません。しかし、言葉以上に誠実な行動と真心をもって、現場の陣頭指揮を執り、スギハラハウス再生プロジェクトを完工へと導いてくださいました。

施工責任者として重い役割を引き受け、最後まで仲間の思いと施工品質を守り抜いてくださった親友・大野雅司さんに、改めて心より感謝申し上げます。

映像は9月のスギハラハウスプロジェクト完了後に作成させて頂いたものです。

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