201709/06
スギハラハウスを守るシリカットペイント
文化遺産の再生に採用された2成分型の鉱物塗料
スギハラハウスの再生にあたり、リトアニア文化遺産局との協議を経て採用されたのが、ドイツ・クライデツァイト社製の「シリカットペイント」です。
シリカットペイントは、次の2種類の材料を施工直前に混合して使用する、2成分型の鉱物塗料です。
・大理石粉、酸化チタン、タルク、カオリン、石英粉などからなる粉末状の基材「シリカットホワイト」
・ケイ酸カリウムと水からなる「水ガラス」
一般的な合成樹脂塗料のように表面へ塗膜を形成するのではなく、水ガラスが鉱物下地と反応する「珪化」によって一体化します。透湿性や耐候性に優れ、歴史的建造物の保全にも用いられてきた鉱物塗料です。
下塗りには、水ガラス1に対して水2の割合で希釈したプライマーを使用します。下地となるプラスターの吸い込みを均一に整え、その後の仕上がりにムラが生じるのを抑えるための重要な工程です。
続く中塗りでは、粉末基材12kgに対して水ガラス17リットルを加え、電動撹拌機でダマがなくなるまで十分に混ぜ合わせます。その後、30分以上寝かせて材料をなじませ、再度撹拌してから使用します。
上塗りは、粉末基材12kgに対して水ガラス10リットルを混合する仕様です。ただし、実際の配合や希釈量については、下地の吸水状態や気候条件を確認し、試験塗装を行った上で調整する必要があります。
施工には高い専門性が求められます。材料は刷毛を用いて、塗り継ぎ部分が乾燥しないよう「ウェット・オン・ウェット」で連続して仕上げなければなりません。ローラーや吹き付けによる施工には対応しておらず、作業を途中で止めると、その部分が色ムラとして残る可能性があります。
クライデツァイト社の技術資料においても、施工には専門的な知識と経験が必要であり、全面施工の前に必ず試験塗装を行うことが推奨されています。クライデツァイト社「シリカットペイント」技術資料
当時、日本では一般に流通していなかった特殊な塗材を使用し、文化遺産として大切にされている建物を仕上げる――。その責任の重さを胸に刻み、材料の計量、撹拌、養生時間、塗装方法の一つひとつを確認しながら、慎重に施工を進めました。
※映像は9月のスギハラハウスプロジェクト完了後に作成させて頂いたものです。





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