202410/15
『塗魂2』とスギハラハウス再生
塗魂2
平尾社長と親友の上林先輩
スギハラハウス再生の施工指揮の大野隊長
精鋭の施工部隊1
精鋭の施工部隊2
黒柳友理さんと愛娘のせんちゃん
三興塗料の社長とマネージャーと研修生のジルビナス
上林塗装家族とジルビナス
プロジェクト完了後のひととき
スギハラハウスの館長と共に
朝日新聞記者として中小企業を取材し、塗魂ペインターズを応援してくださっている中島隆氏が、メンバー一人ひとりの活動と人生に光を当てた書籍『塗魂2』を執筆してくださいました。
『塗魂2』は、2024年10月22日に刊行された、塗魂ペインターズの国内外におけるボランティア活動を紹介する一冊です。第一章「『命のビザ』の現場 永遠に」では、2017年にリトアニア・カウナスで行われた杉原千畝記念館、通称「スギハラハウス」の再生プロジェクトが描かれています。▶NPO法人塗魂ペインターズ『塗魂2』発売のお知らせ
メディアや書籍には、限られた紙面や時間の中で内容を構成し、焦点を絞る必要があります。そのため、一つの出来事が多くの人々の思いと行動によって成り立っていても、すべてを紹介することはできません。
ゲーテが自伝を『詩と真実(Dichtung und Wahrheit)』と名づけたように、同じ事実であっても、どの視点から語るかによって見える姿は変わります。
ここでご紹介する内容は、中島氏の記録を補足し、評価し直すためのものではありません。私自身もプロジェクトに参加した一人として、誌面には収まりきらなかった仲間の真心と行動を、もう一つの記録として残しておきたいと考えました。
1.施工許可を得るまでのプラネットジャパン・平尾社長の尽力
日本ではリトアニアへの渡航準備が進んでいた一方、現地では文化遺産局から正式な施工許可が得られておらず、渡航しても何も施工できないまま帰国する可能性がありました。
その状況を打開するため、株式会社プラネットジャパンの平尾社長は現地通訳を手配し、関係者との協議を幾度も重ねました。そして、ドイツ・クライデツァイト社のシリカットペイントを用いた施工仕様を提案し、作業開始のおよそ1か月前に正式な許可を得ることができました。
さらに、使用材料から産業廃棄物の処分に至るまで、必要な費用をご負担くださいました。表舞台からは見えにくい、まさにプロジェクトの根幹を支えた働きです。
2.現場を率いた大野隊長の葛藤と責任
施工責任者として現場の第一線に立ち、指揮を執ったのが、岐阜県の大野塗装・大野将司社長です。
初めて使用する特殊な塗料、限られた作業時間、文化遺産という失敗の許されない建物。大野隊長は、施工品質と参加者一人ひとりの思いの間で葛藤しながら、難しい判断を重ねました。
現場で塗装できる人数が限られる中、仲間もまた、自分が前に出ることよりプロジェクトの成功を優先しました。その譲り合う心が、現場の秩序と施工品質を支えました。
▶スギハラハウス蘇生に向けて
▶尊敬なる大野隊長1
▶尊敬なる大野隊長2
▶尊敬なる大野隊長3
3.特殊塗料を扱うための材料管理と試験施工
文化遺産局から使用許可を得たシリカットペイントは、欧州の歴史的建造物の保護にも用いられる特殊な材料です。当時は日本へ通常輸入されておらず、現地で初めて扱う塗料であったため、施工直前まで緻密な材料確認と試験施工が行われました。
塗り継ぎによるむらを防ぐ施工方法や材料の調整を入念に検討し、経験豊富なメンバーが役割を分担。現場には「必ず成功させる」という強い緊張感と責任感がありました。
4.親子で参加した黒柳友里さんの思い
黒柳塗装の三代目として仕事と子育てを両立しながら、親子でプロジェクトに参加した黒柳友里さん。
自らが社会貢献に取り組む姿を幼いお子様へ見せたいという思いと、仲間がいれば立場や環境を越えて人の役に立てることを伝えたいという覚悟がありました。その姿は朝日新聞でも紹介されています。
5.カウナスの学生を迎えた三興塗料・清水社長の研修
リトアニアでの施工に先立ち、現地との信頼関係を築くため、カウナスの学生を日本へ迎えて研修が行われましたました。
三興塗料の清水社長は、塗料や施工技術を学ぶ機会を整えるとともに、日本ペイントや関西ペイントでの研修にも尽力してくださいました。施工開始より前から積み重ねられた交流が、国境を越えた信頼の土台となりました。
6.上林塗装・上林社長による心のこもった受け入れ
カウナスの学生を受け入れ、研修や交流に尽力してくださったのが、秩父市の上林塗装・上林猛社長です。
上林社長は、親友である平尾社長を塗魂ペインターズへつないでくださった方でもあります。技術研修だけでなく、食事や地域文化に触れる時間まで用意し、学生たちを温かく迎えてくださいました。
▶上林塗装研修
▶上林塗装研修・うどん編
▶上林塗装研修・温泉編
▶プラネットジャパン研修
7.施工後に向き合ったカウナスの歴史
すべての施工を終えた翌朝、完成したスギハラハウスを確認し、安堵の中でカウナスの街を歩きました。
その時間は、プロジェクトの完了を喜ぶだけではなく、ナチスによる迫害の歴史と、杉原千畝氏が命のビザに託した人道の精神へ、改めて思いを寄せる機会となりました。
このプロジェクトで、改めてお伝えしたいことがあります。
メディアで紹介されたかどうかにかかわらず、参加した一人ひとりが活動に深い意義を見いだし、それぞれの場所で欠かすことのできない役割を果たしていたということです。
そして、参加者の背後には、日本から成功を祈り、送り出してくれた仲間や、留守を守ってくれた家族がいました。
彼らの目的は、メディアに取り上げられることではありません。スギハラハウス再生プロジェクトを無事に完遂し、杉原千畝氏の人道の精神を次代へつなぐことでした。
人生において大切なのは、他人からの評価だけではなく、自らの信念に従って行動し、仲間との絆を深め、支えてくれた家族や友人へ感謝の報告ができること。そして、振り返ったときに「楽しかった」「悔いはない」と言えることではないでしょうか。
改めまして、私心なくスギハラハウス再生プロジェクトに関わってくださった「地上の星」のような一人ひとりに、心より感謝申し上げます。





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