202004/30
あく洗い後に「着色」が必要な理由
10年後の美しさを守る木部再生工法
歴史と風格を湛えた伝統的な日本家屋(和風住宅)の美しさを維持するためには、経年によって真っ黒に変色してしまった木部のメンテナンスが欠かせません。
しかし、木部再生はただ綺麗に洗うだけではなく、「引き渡しから10年が経過してもなお、その美しさを保ち続けられるか」という長期的な視点に立った塗料選定と高度な技術が求められます。この度弊社では、神奈川県川崎市多摩区における、伝統的日本家屋の木部再生工事がこだわり抜いた職人の手によって無事に完成を迎えました。
本記事では、弊社が実施した緻密な「4つの再生工程」の解説とともに、あく洗いを行った後の白木にあえて「茶色の着色保護塗装」を施す、プロならではの重要な理由について詳しくご紹介します。
神奈川県川崎市多摩区にて施工を進めてまいりました、伝統的日本家屋の木部再生工事が無事に完成いたしました。
大切な歴史を刻んできた純和風の木肌を傷つけることなく、新築時の瑞々しい輝きと長期的な耐久性を取り戻すため、弊社ではハード面において以下の厳格な「4工程」を徹底いたしました。
■ 伝統的日本家屋・木部再生の基本4工程
1.あく洗い・カビ落とし:専用の特殊薬剤を使用し、木材の深部に染み込んだカビや頑固な「あく」を徹底的に除去。
2.サンドペーパー研磨:薬剤洗浄によってわずかに毛羽立ってしまった木肌を、微細なサンドペーパーで職人が優しく手作業で磨き、滑らかな質感へと調整。
3.下地オイル(ベーシッククリアオイル)の塗布:吸い込みムラを防ぐため、プラネットジャパン社の「ベーシッククリアオイル」を塗布し、次工程の着色顔料がムラなく均一に浸透するよう下地を均一化。
4.仕上げ保護塗装(ウッドコートの塗布):同じくプラネットジャパン社の高性能自然塗料「ウッドコート」を施し、過酷な紫外線や雨風から木材を長期にわたって保護。
ここで、あく洗いについてお施主様から非常によくいただく、ある大切なご質問がございます。それは、「あく洗いによってせっかく美しい白木(しらき)に戻った木材を、どうしてわざわざ茶色に色を付けてしまうのだろう?」という素朴な疑問や、着色すること自体への抵抗感です。
お施主様のお気持ちは大変よく理解できます。しかしながら、木材を真に劣化から守る立役者こそ、実はこの塗料に含まれている「着色顔料(色がつく成分)」なのです。
もし、顔料が一切含まれていない無色透明なクリアーオイルだけで仕上げてしまった場合、太陽光から降り注ぐ激しい「紫外線」を遮断することができません。その結果、わずか2〜3年という短い期間で木材が再び激しく日焼けを起こし、カビの発生を伴って真っ黒に変色してしまいます。
つまり、多額の費用と膨大な手間をかけて実施したあく洗いの成果が、すべて無駄になってしまうのです。あえて茶色の着色保護塗装を施すことは、決して施工側の作業効率や都合によるものではございません。携わらせていただいた大切なお住まいが、お引き渡し直後の美しさだけにとどまらず、「5年後、10年後が経過した際にも、品格ある最良の状態を維持できていること」をプロとして正確に想定し、ご提案させていただいておりますことを、何卒ご理解いただけますと幸いです。
今回のあく洗いと保護塗装は、一般的な外壁の塗り替え工事よりも遥かに施工の難易度が高く、ミリ単位のムラも許されないため、私自身も幾度となく現場へ足を運ばせていただきました。
やはり自ら現場へ赴き、住まいが美しく生まれ変わるプロセスとともに、ご不安そうだったお施主様が笑顔へと変わっていく表情の変化を目の当たりにすることで、改めて深い実感が胸に湧き上がります。
住まいとは、ただ雨風を遮るために建てられた、単なる「居住の器(うつわ)」ではありません。そこには、ご家族の皆様が共に過ごした日々の息遣いが染み込み、過去の思い出から現在、そして未来へと紡がれていく、かけがえのない特別な時間が流れる場所です。
弊社はこれからも、この「塗装」という尊い仕事を通じ、単に建物の表面を綺麗にするだけにとどまらない施工を追求してまいります。
そこに暮らすご家族の心に深く思いを馳せ、大切な歴史が詰まった特別な場を新築時の輝きとともに蘇らせる「思い出の蘇生屋」として、これからも一つひとつの伝統ある住まいに、誠実、かつ一分の妥協もなく携わらせていただく所存です。
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